SNSや知恵袋、さらに医療・介護従事者の手記や臨床記録には、虫の知らせに関する具体的な体験談が無数に蓄積されています。膨大な実例を精査すると、共通する典型的なシチュエーションが浮かび上がります。
ある40代女性は、自著の手記やインタビューにおいて次のように語っています。
「平日の午後、職場でデスクワークをしていたところ、突然理由もなく激しい胸の圧迫感に襲われ、息が吸えなくなりました。普段なら体調不良でやり過ごすところですが、なぜか離れて暮らす父親の顔が脳裏に張り付いて離れず、居ても立ってもいられず実家に電話を入れました。父はまさにその時、浴室で倒れて心肺停止状態になっており、早期発見によって一命を取り留めました。医師からも『あと10分遅かったら助からなかった』と告げられ、あの胸騒ぎは何だったのかと今でも震えます」
また、介護福祉士やホスピス病棟の看護スタッフの間でも、家族の直感にまつわるエピソードは日常茶飯事です。容態が安定していた終末期の患者に対して、突然遠方の親族が「何となく顔を見に行かなければならない気がした」と新幹線に飛び乗り、到着した直後に呼吸が下顎呼吸へと移行して臨終を迎えるといったケースです。
こうした実例を現場目線で観察すると、虫の知らせが発動する相手は「極めて強い感情的結びつきや心理的バウンダリーの薄い関係性」に限定されています。血縁の深さだけでなく、日頃から無意識レベルでお互いの動向を気にかけ合っている間柄において、脳の直感的レーダーが鋭敏に反応している様子が見て取れます。