「放置していた」という一意的な見方は正しくない。彼女と家族は決して治療を放棄していたわけではなく、むしろ必死で病と向き合っていた。その中で選択されたのが、気功や温熱療法、玄米菜食などを中心とした代替医療だった。医学的根拠が乏しいとされる施術に縋らざるを得なかった背景には、患者を包み込む「絶対に治る」という甘美な言葉と、身体への負荷が少ないという幻想が存在する。
科学的エビデンスに基づく治療は、時として副作用という激しい苦痛を伴う。脱毛や激しい嘔気、手術による不可逆的な身体の変化。これらを目前にしたとき、非侵襲的で優しく見える選択肢は、極度の不安を抱えた患者にとって救いの光に見えてしまう。現代の医学界では、こうした代替療法の単独使用が結果として奏効の機会を奪うリスクについて、より厳しく検証されるようになった。