インターネット上の掲示板やSNS、動画共有プラットフォームで「三毛別羆事件 写真 本物」と検索すると、雪の上に横たわる巨大なヒグマと猟師たちを写したモノクロ写真や、吊るし上げられた大熊を囲む群衆の画像が多数ヒットします。結論から言えば、事件を引き起こした個体「袈裟懸け(けさがけ)」を直接撮影した写真は1枚も確認されていません。
事件が発生した大正4年(1915年)12月の三毛別六線沢は、交通網も未発達な極寒の原野でした。当時の写真機は現在のような携帯端末や小型フィルムカメラではなく、重厚なガラス乾板を用いる大掛かりな機材であり、氷点下の吹雪が吹き荒れる山奥へ即座に持ち込める状況にはありませんでした。また、極貧の中で原始的な生活を送っていた開拓民の集落に写真機を所有する者はおらず、討伐隊にも記録班が同行していませんでした。
現在ウェブ上で「これが三毛別のヒグマだ」として拡散されている画像のほぼすべては、昭和期以降に北海道各地で捕獲された別個体の記録写真、海外のアラスカやロシアで撮影されたグリズリーの狩猟写真、あるいは映画や再現ドラマの宣伝スチール画像が無断転載・誤認されたものです。