中国のプーアル茶など世界に存在する発酵茶の大半はカビ(糸状菌)による発酵だが、阿波番茶はまったく異なるアプローチをとる。加熱処理によって茶葉自体の酵素を失活させたあと、まず微生物による一次発酵を経て、さらに樽の中でじっくりと乳酸発酵を進める「二段発酵」という珍しい技法だ。
主な産地である徳島県勝浦郡上勝町などの山間地域では、真夏の厳しい暑さのなか茶摘みが行われる。収穫された大きな茶葉は大釜で茹でられ、木製の擦り機で揉まれた後、巨大な桶に隙間なく踏み固められる。数週間に及ぶ暗闇での発酵を経て、天日で乾かされることで、あの黄金色の輝きと芳醇な酸味が完成する。
微生物の働きを人の手で絶妙にコントロールするこの技法は、まさに自然と人間が織りなす究極のバイオテクノロジーと言えるだろう。微生物群のバランスが地域や農家ごとに微妙に異なり、それが一枚一枚の茶葉に固有の味わいと高い栄養価値を与えている。