目が離れている人に対して、多くの人が「親しみやすい」「無邪気で可愛らしい」「守ってあげたくなる」という感情を抱きます。この心理作用は、単なる主観的な好みではなく、人間の進化過程に組み込まれた認知メカニズムによって説明がつきます。
動物行動学者コンラート・ローレンツが提唱した「ベビースキーマ(Kindchenschema)」という概念があります。人間は、丸みを帯びた輪郭、身体に対して大きな頭、そして「顔の低い位置にあり、間隔が広く開いた大きな目」といった乳幼児特有の身体的特徴を目にすると、本能的に攻撃性が抑制され、養育行動や庇護欲が引き出されるよう脳がプログラムされています。成人の顔立ちであっても、両目の距離がわずかに離れているだけで、相手の警戒心を瞬時に解きほぐす天性の愛嬌として作用するのです。
さらに、近年ファッショングラビアやハイブランドの広告塔として熱い視線を集めるのが、いわゆる「魚顔」「爬虫類顔」と呼ばれる系統のアイコンたちです。目と目の間隔に適度な余白があることで、顔全体に力みが抜けた「エフォートレスな透明感」と「ミステリアスなアンニュイさ」が宿ります。完璧な左右対称や求心的な配置が時に相手へ緊張感や威圧感を与えるのに対し、遠心的な配置はどこか掴みどころのない余白を残し、それが観る者の想像力を掻き立てる奥深い魅力へと昇華しています。