1982年8月、シングル『アイ・ラヴ・ユーこの街角』で鮮烈なデビューを飾ったばかりの三好鉄生が、間髪を入れずに発表した2ndシングルが『涙をふいて』でした。本作が一躍全国区のメガヒットへと駆け上がった最大の起爆剤は、当時の一流クリエイターが総力を結集していた資生堂CMソングの経緯にあります。
1980年代前半の資生堂は、男性化粧品ブランド「ヴィンテージ」のイメージ戦略において、従来のダンディズムに「哀愁」と「優しさ」を掛け合わせた新たな男性像を提示しようとしていました。そこで白羽の矢が立ったのが、北海道の原風景を思わせる無骨さと温もりを併せ持った三好鉄生の歌声でした。当時の広告業界関係者の回想録によると、「映像の洗練された都会美と、三好鉄生の泥臭くも圧倒的な歌唱力という強烈なコントラストが、視聴者に鮮烈なインパクトを残した」と記されています。
制作を手掛けたのは、昭和歌謡界の黄金期を牽引した名コンビです。鈴木キサブローが作曲を手掛け、哀愁漂う美しいマイナーコードからサビで感情を爆発させるダイナミックなメロディラインを構築。そして、康珍化が作詞を担当し、決して上から目線ではない、同じ痛みを分かち合う男の不器用なエールを見事に言語化しました。当時オリコンシングルチャートで最高17位を記録し、長期にわたってチャートインし続けるロングセラーを記録した背景には、タイアップの華やかさだけでなく、楽曲そのものが持つ圧倒的な純度の高さが存在していました。