この画期的な触覚ケアの原点は、スウェーデンの看護師シヴ・ソーデルベリ氏の深い慈愛と臨床観察にある。彼女は1960年代、未熟児室で保温器の中にいる赤ん坊たちが皮膚への接触を通じて生命力を取り戻す姿や、終末期患者が手のぬくもりによって死の恐怖から解放される瞬間を目の当たりにした。ラテン語の「タクトゥス(触れる)」に由来するこの技法は、医療の枠組みの中で体系化され、瞬く間に福祉先進国スウェーデン全域へと浸透していった。
その普及運動を確固たるものにしたのが、スウェーデン国王の伴侶であるシルヴィア王妃の存在だ。自身の母親が認知症を患った経験を持つシルヴィア王妃は、認知症患者とその家族のQOL(生活の質)向上を目指し、シルヴィアヘム財団を創設した。同財団は、質の高いケア技法としてタクティールケアを公式に採用し、教育プログラムや専門教育機関の設立を全面的にバックアップしてきた。
スウェーデン国内では、医療従事者や介護専門職のみならず、家族介護者にも広く受講の機会が提供されている。「人間は誰しも、死を迎えるその瞬間まで尊厳ある存在として触れられる権利がある」というシヴ・ソーデルベリ氏の思想は、今や北欧の福祉精神の象徴として世界中へ広がりを見せている。