江戸幕府の治安維持において最も警戒されたのが、江戸へ武器が持ち込まれる「入り鉄砲」と、人質として江戸に住まわせていた諸大名の妻子が領国へ逃げ帰る「出女」でした。東海道の要衝であった新居関所跡の歴史を紐解くと、特に出女に対する取り調べの過酷さが際立っています。
新居関所では、女性が通行する際に幕府留守居役が発行した「女手形(通行手形)」の提示が厳格に求められました。手形に記された人相、年齢、ほくろの位置、髪型にいたるまで一分の狂いも許されず、その審査を担当したのが「改女(あらためおんな)」と呼ばれる専従の女性役人です。
関所内の取調室(面番所の奥)に連れ込まれた女性旅人は、着物を脱がされての身体検査はもちろん、髪を結い直して中に密書を隠していないか調べるため、結った髪をその場で解いて調べられることも日常茶飯事でした。現代の空港保安検査をはるかに凌駕する心理的・肉体的重圧が、旅人たちにのしかかっていた現場の空気が今も面番所内に色濃く漂っています。