食品添加物を巡る言説の中には、科学的根拠が乏しいまま都市伝説化しているものが少なくありません。代表的な誤解を検証します。
誤解①:「添加物は体内に毒素として蓄積し続け、一生排出されない」
これは毒性学の基本概念を無視した誤解です。認可されている指定添加物の大半は水溶性であり、肝臓で代謝され、腎臓を経て尿や便、呼気から短期間で体外へ排泄されることが動物試験や薬物動態試験で確認されています。脂溶性で蓄積性が懸念される物質については、そもそも厳しく使用が禁止されているか、極めて厳しい残留基準が定められています。
誤解②:「天然由来の添加物なら安全、合成添加物は危険」
「天然=善、化学合成=悪」という思考は、心理学でいう「ナチュラル・バイアス」の典型例です。自然界に存在する植物や菌類にも猛毒(トリカブトのアルカロイドやキノコ毒など)が存在するように、天然由来成分であってもアレルギー誘発性や変異原性を持つ物質は存在します。例えば、かつて天然着色料として多用された「アカネ色素」は、発がん性が確認されて指定を取り消された歴史があります。安全性は「天然か合成か」ではなく、「構造と生体への作用機序」によってのみ判断されるべきです。
誤解③:「日本の添加物認可数は世界一で1,500種類以上もある」
ネット上で最も頻繁に引用されるデマの一つです。この数字は、日本が「バニラ香料」「イチゴ香料」など天然香料や一般飲食物添加物まで細かく個別カウントしているのに対し、米国や欧州は「香料」と一括りに包括登録している統計基準の違いを混同した比較に過ぎません。化学合成された純粋な指定添加物の品目数で比較すれば、日本と欧米の間で極端な開きは存在しません。