アメリカがベネズエラを敵視し、時に武力攻撃すら示唆して強い圧力をかけ続ける根本的な理由は、「石油利権」「反米独裁体制」「他大国との軍事的結託」という3つの要素が複雑に連鎖している点にあります。メディアではしばしば「民主主義と人権の侵害に対する制裁」と報じられますが、国家間のパワーゲームにおける動機はそれほど単純ではありません。
決定的な契機となったのは、1999年に誕生したチャベス政権による「21世紀の社会主義」政策でした。それまでアメリカ資本のエクソンモービルやコノコフィリップスなどが莫大な利益を上げていたベネズエラの油田を、故ウゴ・チャベス大統領が国有化し、米国企業を事実上追放したのです。これにより、長年にわたり築かれていた欧米のエネルギーサプライチェーンが断絶し、ワシントンとの決定的な亀裂が生じました。
後継者であるマドゥロ大統領とアメリカの敵対は、この対立構造をさらに過激化させました。2024年7月に行われたベネズエラ大統領選挙では、現職のマドゥロ氏が勝利を宣言したものの、野党側が集計結果の改ざんを主張。米バイデン政権(当時)や国際社会は「不正選挙」と断定し、強烈な非難声明を発表しました。アメリカにとって、自国の安全保障圏(モンロー主義に基づく西半球の覇権)の喉元で、親米派を弾圧し独裁を固める政権の存在は、地政学的に絶対に容認できないレッドラインとなっているのです。