若者の精神的健康を守るためには、個人の対処法だけに依存するのではなく、採用システムそのものが孕む構造的な歪みに目を向ける必要がある。企業の産業保健・メンタルヘルスケアを担う産業医や専門スタッフの間からは、現在の採用慣行が学生に強いる負荷に対して強い懸念の声が上がっている。
形骸化した就職活動のルールや、企業側の過度な囲い込み、内定辞退を阻止するための心理的重圧などは、社会経験の乏しい学生にとって過大な精神的暴力となり得る。人材採用・就職活動支援産業が肥大化するにつれ、完璧なエントリーシートの書き方や「模範解答」ばかりが強調され、学生がありのままの自己を表現する余白が奪われている現状も否めない。
厚生労働省をはじめとする行政機関も、若年層のメンタルヘルス対策や過剰な就職活動ルールの是正に向けた指針を示してはいるものの、企業の採用競争の過熱には歯止めがかかっていない。企業側もまた、過度な心理負荷を与えて採用した人材が入社後に早期離職や適応障害を起こすリスクを直視し、選考プロセスにおける人道的な配慮と透明性の確保を真剣に模索すべき局面に立たされている。