日本神話における天照大御神の隠れ場所として知られる天の岩戸。結論から言えば、その洞窟の入口とされる場所は宮崎県西臼杵郡高千穂町の「天岩戸神社 西本宮」の背後、岩戸川(いわとがわ)を挟んだ対岸の断崖絶壁に実在します。
一般的な神社では本殿の中に御神体が祀られますが、天岩戸神社西本宮には本殿が存在しません。社殿の奥に広がる原生林と断崖に口を開ける洞窟そのものが御神体だからです。この場所が「禁足地」として扱われる理由は、単なる危険防止ではありません。古代のアニミズム(自然崇拝)と神道儀礼において、神が鎮座する聖域に人間が足を踏み入れることを「穢れ(けがれ)」として徹底的に避けてきた歴史的背景があります。
現地に伝わる口伝や宮司の解説によれば、過去に好奇心から川を渡り洞窟へ近づこうとした者が不可解な災難に見舞われたという伝承も残されています。現在も注連縄(しめなわ)が張られた対岸の岩壁一帯は人の侵入を頑なに拒み続けており、厳粛な神域としての威厳を今に伝えています。