睡眠研究の世界的な権威であるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の所長・西野精治教授は、著書や数々の学術論文を通じて「最初の90分の深睡眠」の決定的な重要性を説き続けてきた。日本睡眠学会の最新知見においても、入眠直後のファーストサイクルをいかに深く保つかが、翌朝の疲労回復と脳の老廃物排出を左右することが証明されている。
西野教授らが解き明かした入眠の鍵は「皮膚温度と深部体温の差」にある。人間は深部体温がスムーズに下がることで眠気を催す。手足の末梢血管から熱を放散させ、身体の中心温度を一気に下げるプロセスこそが入眠の物理的スイッチだ。
しかし、考えすぎて脳が興奮していると、自律神経の乱れから末梢の血管が収縮し、熱放散が妨げられてしまう。脳が熱を持ち、深部体温が下がらない状態では、どんなに布団の中にいても身体は休眠モードに移行できない。入眠障害の多くは、精神的な問題であると同時に、極めて物理的な体温調節不全の結果なのだ。