誰もが御幸の仮面に欺かれるなか、唯一その異常を鋭く見抜いたのが、副主将であり同室(寮の青心寮5号室)の倉持洋一でした。グラウンド上では飄々とした態度を崩さない御幸でしたが、日々の生活をゼロ距離で共にする倉持の観察眼をごまかすことはできませんでした。
普段なら何気なくこなすベッドへの出入りや、寝返りを打つ際に漏れるわずかな息の乱れ、着替えの際に一瞬見せるかばうような仕草。倉持はそれらの微細な変化を見逃さず、夜の室内で御幸を壁際へ追い詰めるようにして問いただします。
「てめえ、脇腹やってんな?」
倉持の直球の問いに対し、最初は誤魔化そうとした御幸も、最後は隠しきれない事実を認めざるを得ませんでした。激昂した倉持は「ふざけんな!キャプテンのお前が倒れたらこのチームはどうなるんだ!」と胸ぐらを掴まんばかりに詰め寄ります。副主将として、また友人として、御幸の将来を心配するからこその激しい怒りでした。
しかし、御幸の「ここまで来て、グラウンドの外から指をくわえて見てろって言うのかよ」という鬼気迫る懇願を前に、倉持は最終的にその覚悟を背負う道を選びます。「代わりに出る奴の気持ちも考えろ」と釘を刺しつつも、御幸の強行出場を誰よりも近くで支え、フォローに回る決意を固めた倉持。二人の間に交わされたこの夜の密談は、作品屈指の名場面としてファンの記憶に刻まれています。