この微笑ましいやりとりを深く理解するには、登場人物たちの血縁と宮廷内での立場を押さえておく必要があります。
1. 中宮定子(ちゅうぐう・ていし)
一条天皇の正妃。関白・藤原道隆の長女であり、聡明で優雅な宮廷サロンの中心人物。清少納言が生涯をかけて敬愛した主君です。
2. 藤原伊周(ふじわらの・これちか)
定子の同母兄。当時は中納言(のちに内大臣)の要職にあり、若くして権勢の頂点に立っていたエリート貴公子。容姿端麗で漢詩や和歌の才能にも恵まれていました。
3. 藤原隆家(ふじわらの・たかいえ)
定子と伊周の同母弟。会話の中で「珍しい骨を持ってきた人物」として名前が登場します。後年、刀伊の入寇を撃退するなど豪胆な性格で知られた武闘派の貴族です。
4. 清少納言(せいしょうなごん)
定子に仕える女房。卓越した言語感覚と漢学の知識を持ち、定子サロンの知性を代表する存在でした。
兄妹のプライベートな団らんに清少納言が自然と加わり、身分の高い伊周に対して遠慮のないウィットを投げかけられる関係性。ここには、政治的な権力闘争が激化する直前の、定子後宮がもっとも光り輝いていた幸福な空気が克明に刻まれています。