「金沢で勝負するなら、観光客を狙った飲食店を開きたい」と考える起業家は後を絶ちません。しかし、現場のリアルな供給状況を見ると、最も高いハードルとなっているのが金沢テナント飲食可能物件の不足です。
金沢市中心部の古くからの雑居ビルでは、排気ダクトの屋上引き上げが構造上難しかったり、電気容量やガス給管の口径が不足していたりする物件が少なくありません。都市部の条例や近隣住宅への臭気配慮も厳格化しており、「路面で人通りがあるのに、火や油を使う本格的な調理ができない」という制約に直面するケースが頻発しています。
そうした中で注目されるのが、初期投資を大幅に抑えられる片町テナント居抜き物件です。厨房機器や内装がそのまま残された物件は、通常なら数百万円から1,000万円以上かかる開業内装費用を半分以下に圧縮できる魅力的な選択肢に見えます。しかし、片町で2025年に居抜き物件を取得したある若手オーナーは、自身の苦い体験を明かします。
「厨房設備一式込み、造作譲渡代金200万円という好条件で契約しました。しかし、いざオープン準備に入るとグリストラップ(油脂分離阻集器)の腐食が進んでおり、配管の全交換で追加工事に150万円以上かかりました。さらにエアコンの基板が古すぎて修理部品がなく、真夏を前に新品への総入れ替えを迫られたのです。結果的にスケルトンから作ったのと大差ない費用がかかり、オープンが2か月遅れました」
ネット上の掲示板やSNSでは「片町の居抜きは掘り出し物の宝庫」といった甘い言説が散見されますが、現場の事実は異なります。退去した前テナントの経営状態が悪化していた場合、設備の定期メンテナンスが長期間放置されているケースが珍しくありません。居抜き物件を検討する際は、専門業者を同行させた水道・ガス・電気・換気の入念な現況調査が絶対に不可欠です。