1893年作の国立美術館版『叫び』には、長年研究者を悩ませてきた謎が存在した。画面左上の赤い空の部分に、鉛筆で極めて小さく「狂人にしか描けない(Kan kun være malet af en gal Mand!)」と書き残されていたのだ。
かつては「作品に怒った観客による悪質な落書き」という説が有力だった。しかし、近年の赤外線スキャン技術を用いた微小筆跡鑑定により、この文字はムンク本人の手筆であることが決定づけられた。1895年に作品が初めて展示された際、批評家や精神科医から「ムンクの精神状態は正常ではない」と激しいバッシングを受けた。若きムンクはその酷評に傷つき、皮肉と自虐を込めて自ら書き加えたと考えられている。