権力と金が集まる場所に、罠は密やかに仕掛けられる。海外出張中の政治家や外交官が現地で接触した人物と親密な関係になり、ホテルでの決定的な写真や映像を盾に脅迫されるケースは今も昔も途絶えない。要求されるのは国家の外交方針の変更や機密文書の提供であり、逆らえば政治生命の終わりを意味する。
危険は永田町や公邸だけに留まらない。最先端技術を追う民間企業の役員や研究職へのアプローチは格段に激しさを増している。ある半導体メーカーの役員は、海外展示会で意気投合した女性ビジネスパートナーに魅了され、自社が長年蓄積してきた設計特許の内部情報を漏らしてしまった。流出した資産はそのまま競合企業の手に渡り、数千億円規模の損害を引き起こした。機密の流出が一企業の存続を脅かすだけでなく、国家安全保障の基盤を揺るがす深刻な事態へ直結する時代なのだ。