歌舞伎界の系譜を語る上で、市川團十郎家(成田屋)と尾上菊五郎家(音羽屋)の存在を外すことはできない。江戸歌舞伎の開祖とも言える成田屋は、豪快な「荒事(あらごと)」の芸を骨頂とし、代々の團十郎が江戸っ子の英雄として君臨してきた。2026年現在も、その圧倒的な存在感と看板の重みは他の追随を許さない。
対する音羽屋は、世話物や舞踊における緻密な表現力、そして洗練された「粋」を追求してきた。一見すると対極に位置するこのふたつの名門だが、歴史を紐解けば幾度となく婚姻関係や芸の交流を重ねており、互いに刺激し合いながら江戸歌舞伎の双璧として歴史を紡いできたのだ。