ピッツァが窯の中に入ってから焼き上がるまでの時間は、わずか60秒から90秒。ドーム型のドーム天井を這う炎は450度以上に達する。この過酷な熱空間で、生地に含まれる水分が一気に蒸発し、特徴的な「コルニチョーネ(縁)」の膨らみが生まれる。
焦げ目は決して焼き損じではない。イタリア語で「マッキア・ディ・レオーネ(ヒョウ柄)」と呼ばれるその斑点模様こそ、超高温で一気に火が通った証だ。表面はパリッと香ばしく、内側は驚くほどモチモチとした水分量を保つ。この矛盾する二つの食感を同時に成り立たせることこそ、職人が追い求める理想の物理学だ。