奈良県広陵町を中心とする地域は、明治時代から続く靴下の一大産地だ。しかし、安価な輸入品の流入により、多くの町工場が廃業を余儀なくされてきた歴史を持つ。この逆境において、タビオが奈良のサプライチェーン再構築にこだわった理由は明確だ。他国では真似できない「目に見えない技術」がこの地に眠っているからである。
糸の張りを調整する微妙な加減、気温や湿度によって変化する編み機の「機嫌」を読み取る感覚。これらはマニュアル化できない。職人の身体感覚に依存する暗黙知の世界だ。タビオは奈良の老舗工場とタッグを組み、この職人技を保護するだけでなく、次世代へと継承するための新たなエコシステムを確立した。これが、聖地・奈良の「第2の創業期」と呼ばれる所以である。