日本を代表するパティシエ・辻口博啓氏をはじめ、製菓・スイーツ業界の第一線で活躍する職人たちは、繊細で淡白な和梨の香りをいかに立たせるかに試行錯誤を重ねてきた。イチゴやキウイのように酸味やアロマが前面に出ない和梨は、単に砂糖と煮詰めるだけでは「ただの甘い煮物」になりかねない。
ここで威力を発揮する隠し味が、少量のブランデーやホワイトラム、そしてかすかなカルダモンなどのスパイスだ。アルコール分は沸騰時に完全に飛ぶため、子供や酒に弱い人でもまったく問題ない。加熱によって果実の奥深くに潜む芳醇なアロマだけがくっきりと浮かび上がる。鍋底から湧き立つ蒸気とともに立ち上る香りは、まさに高級洋菓子店の厨房そのものだ。