ピサの斜塔が傾いた最大の要因は、建設地の極めて特殊な地質条件にあります。1173年に着工されたこの鐘楼の敷地は、かつて河川(アルノ川とセルキオ川)の合流地点であり、地表下数メートルにシルト、粘土、砂が幾重にも重なった極めて軟弱な泥土層が広がっていました。
基礎工事がわずか深さ約3メートルと浅かったことも災いし、第3層まで建設が進んだ1178年頃にはすでに南側への不均等な地盤沈下が始まりました。その後、戦争による約1世紀にわたる工事中断を挟みながら、1372年に最上層の鐘楼が完成するまで約200年の歳月を要することになります。
工匠たちは傾きを修正しようと、4階以上の層で南側の柱や壁を北側よりわずかに高く造る補正を行いました。その結果、ピサの斜塔の高さと構造を精密に計測すると、北側約55.86メートル、南側約56.67メートルと非対称であり、全体としてバナナのようにわずかに反り上がった独特の湾曲形状を描いています。総重量は約1万4,500トンに達し、その膨大な荷重が局所的に地盤へ圧力をかけ続けたのです。