ネット上のまとめサイトや動画の一部では、リリース当初の宣伝規模の大きさとのギャップから「『妖怪ウォッチ ワールド』はすぐに人がいなくなった爆死ゲームだった」と揶揄されることがあります。しかし、モバイルゲーム市場の客観的なデータと照らし合わせると、この評価は大きな誤解を含んでいます。
第一に、位置情報ゲームというジャンル自体が「生存率の極めて低い激戦区」であるという事実です。2016年の『ポケモンGO』の大ヒット以降、国内でも多数の有名アニメやゲームIPを用いた位置情報タイトルが乱立しましたが、その多くはリリースから半年〜1年半以内にサービス終了へ追い込まれています。そうした厳しい市場環境の中で、約4年6ヶ月(1,640日間)にわたって安定したサーバー運営を継続し、全国規模の自治体コラボや企業タイアップ(ファミリーマートや回転寿司チェーンなど)を完走した実績は、業界水準で見れば十分に健闘した数字です。
第二の盲点は、本作が提示した「移動弱者への配慮」というゲームデザインの先進性です。従来の位置情報ゲームは、都市部に住み、毎日何キロも歩ける健康なプレイヤーが圧倒的に有利になる「地域格差・体力格差」を常に抱えていました。それに対し、ガンホーとレベルファイブが実装した「ヒョーイ」と「妖怪の木」は、地方在住者や外出が困難なプレイヤーでも全国の妖怪と出会える画期的な仕組みでした。このコンセプトは、のちに他社が開発した位置情報ゲームの「遠征機能」や「自宅プレイ補助機能」にも少なからず影響を与えています。
さらに、サービス終了時に開発コストを割いてまでオフライン版『妖怪ウォッチ ワールド メモリーズ』を制作・無償提供した点は、特筆すべき誠実さです。採算が合わなくなったタイトルはサーバーを閉じて完全に消去するのが業界の通例である中、妖怪大辞典のデータ引き継ぎを用意したことで、ブランドへの信頼は最後まで守られました。