パシフィコ横浜前をスタートし、横浜赤レンガ倉庫、横浜三渓園、本牧ふ頭を経て、首都高速道路湾岸線を折り返し、臨港パークでフィニッシュを迎える全長42.195km。全体的なコース高低差を見ると、極端な峠越えのような急勾配は存在しないように見えます。しかし、多くの出走者が「中盤以降がきつすぎる」と口を揃える最大の要因は、約21km地点から突入する首都高速道路区間にあります。
運動生理学およびコース設計の観点から、高速道路が過酷である理由は主に3点に集約されます。
第1に、路面の横断勾配(水はけを考慮したカント・傾斜)です。普段は車が高速走行するために道路外側や内側へ傾斜がつけられており、平坦に見えても左右非対称の負荷が足首や膝関節、股関節へ蓄積します。これが約10km以上続くことで、ランナーの下半身を確実に破壊していきます。
第2に、路面の材質と硬度です。一般的な一般道よりもアスファルトの骨材が硬質で衝撃吸収性が低く、着地衝撃がダイレクトに筋肉へと跳ね返ってきます。さらに遮るもののない高架上では強い海風が吹き荒れ、直射日光が容赦なく体力を奪います。
第3に、心理的ストレスと応援の空白です。高速道路上は一般観覧者の立ち入りが完全に禁止されているため、それまで沿道から届いていた大声援が突如として途絶えます。無機質なコンクリートとアスファルトだけが続く孤独な空間は、疲弊したランナーから「走る気力」を奪う心理的トラップとして立ちはだかります。
また、横浜マラソンの制限時間は6時間30分とゆとりがある設定ですが、各地点に設けられた関門閉鎖時刻の設定は決して油断できません。特に高速道路の出入口や給水所付近の関門は、混雑によるタイムロスや脚の疲労が重なることで、想定外のタイムオーバーに追い込まれるリスクを孕んでいます。