アニメ版のクリーンなイメージしか知らない者が初期の原作マンガを開くと、そのブラックユーモアのキレに絶句する。ドラえもん自身が平然と毒舌を吐き、登場人物たちがエゴイズムを全開にして泥臭くぶつかり合う。この「毒」の存在こそが、物語を単なるお道徳ドラマから極上のエンターテインメントへと昇華させている。
藤子・F・不二雄は、人間の醜さや愚かさを決して排除しなかった。欲張りで自惚れ屋のジャイアン、嫌味なスネ夫、そしてずる賢いのび太。誰もが清廉潔白ではないからこそ、彼らのやり取りは爆笑を生み、時に痛烈な人間風刺として機能する。甘いだけのファンタジーではないビターな隠し味が、何度読んでも飽きさせない中毒性の正体だ。