ネット上の掲示板やSNSでは、「認印なんて100円ショップの安物で十分」「銀行口座も100均の印鑑で開設できたから何の問題もない」といった言説が散見されます。手続きの可否だけで言えば、朱肉を使う印鑑であれば100均の既製品であっても窓口で弾かれないことはあります。しかし、ここには専門家が警鐘を鳴らす構造的な落とし穴が存在します。
まず、認印シャチハタ不可の理由についてです。インク内蔵式の浸透印(一般にシャチハタと呼ばれるゴム製印)は、宅配の受け取り等には便利ですが、銀行届出印や公的契約の認印としては全面的に不可とされています。その理由は主に3つあります。第1に、印面が弾力性のあるゴムで作られているため、押す力の強さや角度によって印影が毎回数ミリ単位で歪み、金融機関の機械照合で一致しなくなること。第2に、インクの経年劣化によって印影が数年で退色・消失し、将来的な証拠能力を失うこと。第3に、工業製品として完全に同一の印影が何万本も量産されているため、個人の認証性が極めて乏しいことです。
そしてさらに深刻なのが、100均認印の危険性と真相です。100円ショップで販売されている印鑑は、コスト削減のために同一のデジタル金型を用いて大量射出成型されたプラスチック製品です。つまり、日本全国の100円ショップで、あなたと寸分違わぬ同一の印影を持つ印鑑が数十万本単位で店頭に並んでいることを意味します。これを銀行印にしてしまうと、悪意ある第三者が近隣店舗で同じ苗字の印鑑を買い揃えるだけで、あなたの預金口座から現金を払い戻す物理的ツールを手に入れてしまうリスクがあります。過去の不正出金事件でも、同一金型の安価な印鑑が悪用された事例が司法記録に刻まれています。日常のメモ書き程度ならまだしも、資産管理の要である口座開設において、大量生産の既製認印を用いるのは極めて無防備な行為です。