サビで高らかに歌われる「NO.1にならなくてもいい もともと特別なOnly one」というフレーズは、発表当時、過度な競争社会に疲弊していた日本人に強烈なカタルシスを与えました。しかし、この歌詞の本質は単なる「ぬるま湯の現状肯定」や「競争からの逃避」ではありません。
槇原敬之氏自身がのちに語っているように、この詞の根底には仏教の根本経典の一つ『仏説阿弥陀経』に登場する「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光(青い花は青く光り、黄色い花は黄色く光る。それぞれが独自の美しさと尊さを持っている)」という思想が深く息づいています。
歌詞を精読すると、花屋の店先に並ぶ花々は「どれも綺麗に咲いている」状態です。つまり、種が芽吹き、懸命に根を張り、自分だけの色と形をした花を咲かせるためのひたむきな努力を前提としています。「他者と比較して優劣を競うことに心をすり減らすのではなく、自分自身に与えられた個性を最大限に全うすることこそが尊い」という、自立と自己受容のメッセージこそが真のテーマです。
社会心理学の観点からも、他者評価軸(他者からの承認)ではなく内部評価軸(自己肯定感)へ視点をシフトさせる心理的バウンダリー(境界線)の重要性を、ポピュラー音楽として極めて平易な言葉で定着させた稀有な作品といえます。