最高裁判事に欠員が生じる際、官邸と最高裁の間で極めて周到な根回しが行われます。表向きは内閣総理大臣および閣僚会議(閣議決定)によって選定されますが、裁判官出身枠に関しては最高裁長官が後任候補者を内閣に内申(事実上の推薦)し、内閣がそれをそのまま追認するのが長年の慣行でした。
しかし、憲政史上では内閣の裁量が強く発揮された局面も存在します。内閣官房幹部や法務省との事前折衝において、政権の法制方針や国家観と大きく乖離しない候補者が選ばれる傾向が見られます。最高裁判所判事の歴代一覧を紐解くと、昭和中期から平成、令和に至るまで、長官には東京大学法学部出身の裁判官エリートが連続して登用されてきた歴史があり、司法の独立と内閣の任命権のバランスは常に緊張関係を孕んでいます。
近年では、女性判事の積極的な登用や企業法務に精通した実務派弁護士の抜擢など、社会情勢の多様化に応じた変化も見られます。それでもなお、最終的な名簿の決定権が内閣官房に握られている構造に変わりはありません。