本作が国境を越えてグローバルなメガヒットとなった背景には、海外翻訳版における秀逸なローカライズが存在します。私が来た 英語表記 I am hereという英訳は、一見すると極めて平易な中学英語レベルの構文に見えます。しかし、英語圏のファンや言語学者からも、この訳出は「神懸かり的なニュアンスの再現」として絶賛を浴びました。
もしこれが過去形や完了形(I have come や I arrived)であったなら、「単に現場へ到着した移動の事実」を報告するニュアンスが強まってしまいます。あえて存在を表す現在形のbe動詞を用いた「I am here!(私はここにいる=今この瞬間から、君の前に私が存在する)」としたことで、「私がここにいる以上、もはやいかなる危害も君には及ばない」という心理的セーフティネットの確立を鮮烈に提示しました。海外の大型アニメエキスポで現地の観客が地鳴りのような合唱を巻き起こす現象は、この英語表現の切れ味の良さが後押ししています。
そして、日本語版において言葉に血肉を通わせたのが、オールマイト声優 三宅健太氏の凄まじい表現力です。三宅氏は抜擢当初、前任のレジェンド声優たちが築いてきたような「絶対的な大英雄」のオーラを前にプレッシャーと闘い続けたと述懐しています。地響きのような低音の中に、傷つきながらも民衆を恐怖から守るために絞り出す慈愛と狂気じみた気迫。収録スタジオで酸欠になりかけるほどの熱量を注ぎ込んだ三宅氏の芝居があったからこそ、「私が来た」は虚構を超えた本物の福音として視聴者の鼓膜と魂に焼き付きました。