厳しい批判を浴びたアベノマスクですが、政策的に完全に無価値だったのかといえば、複眼的な検証が必要です。一部の経済アナリストや当時の政策担当者は、「布マスク配布の表明自体が、不織布マスクの買い占めや投機的な価格高騰を冷え込ませるアナウンスメント効果を持った」と主張しています。
実際、配布表明直後の2020年4月中旬以降、中国市場での供給過剰と相まって、日本国内のマスク転売相場は急速に暴落へと向かいました。しかし、これに対する反論も根強く存在します。同時期にシャープなどの国内大手企業が不織布マスクの生産ラインを立ち上げ、台湾や中国からの輸入ルートが正常化したことこそが価格暴落の主因であり、布マスク事業の直接的貢献度は極めて低かったとする分析が現在では主流です。
また、アベノマスクの現在の状況として、完全に消滅したわけではありません。希望配布に応募した自治体では、防災備蓄品や清掃用具、あるいは学校教育現場の教材としてストックされており、巨額のコストと引き換えに得られた資材が細々と再利用され続けています。