兄弟の長男である小澤克己氏は、弟たちとは異なり「美術・造形」の世界で独自の境地を切り拓いた彫刻家・詩人です。東京美術学校(現・東京藝術大学)で彫刻を学び、戦後の日本現代彫刻界を牽引した「行動美術協会」の重鎮として長年活動しました。
克己氏の作品は、木やブロンズが持つ生命力と静謐な精神性を融合させたものが多く、公共施設や美術館に数多く収蔵されています。派手なメディア露出を好まず、ひたすらアトリエで鑿(のみ)を振るい続けた孤高の芸術家肌であり、弟・征爾氏が若き日にスクーター1台でフランスへ単身渡航した際も、芸術家としての矜持を誰よりも理解し、陰ながら熱狂的に応援し続けた長兄でした。
2008年に80歳で逝去した際、親族や関係者の証言によると、征爾氏は「兄貴の彫刻に向き合う厳しい眼差しこそが、自分のスコア(総譜)への向き合い方の原点だった」と語り、長兄への深い畏敬の念を表していました。