日本において人工妊娠中絶を法的根拠として支えているのが母体保護法です。同法は主に「身体的または経済的理由により、母体の健康を著しく害するおそれがある場合」などに中絶を認めていますが、胎児の障害そのものを理由とした中絶規定は明文化されていません。そのため、現場では経済的理由などを建前として処理が行われているのが実情であり、法制度と現実の運用の間に大きな乖離が生じています。
この法制度のグレーゾーンは、当事者である女性たちにさらなる罪悪感を強いる要因となっています。法律上の曖昧さが原因で、適切なカウンセリングを受ける機会が奪われたり、医療従事者の間でも対応方針にバラつきが生じたりしています。諸外国と比較しても日本の生殖医療や中絶に関する法的枠組みは立ち遅れており、時代に即した法改正や議論のアップデートが強く求められています。