朝起きてすぐにスプーン1杯のアイスクリームを口にする「朝アイス」という習慣。一見すると体に悪そうな行動に思えますが、杏林大学名誉教授の古賀良彦氏らが行った脳機能実験によって、目覚ましい生理学的効果が確認されています。被験者に起床直後アイスクリームを摂取させたところ、冷水など他の冷刺激を与えたグループと比較して、脳波における「α波(リラックスしながら集中している状態を示す脳波)」の出現率が有意に高まり、作業記憶や情報処理スピードの向上が確認されました。
この現象の背景には、2つの強力なトリガーが存在します。第1に、口腔内の冷受容体(TRPM8など)が瞬時に刺激されることで三叉神経を通じて脳幹網様体が刺激され、睡眠状態にあった大脳皮質が一気に覚醒モードへ切り替わるメカニズムです。第2に、適量な糖質が素早く分解されて脳の唯一のエネルギー源であるグルコースとして供給され、夜間に枯渇した思考回路へ燃料を行き渡らせる点にあります。
さらに、乳製品特有のフレーバーと舌触りは副交感神経を刺激し、精神的ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制する働きも見逃せません。香気成分バニリンや乳脂肪のまろやかさが脳幹の報酬系を適度に刺激し、朝特有の倦怠感を吹き飛ばす心地よいリセットボタンとして作用するのです。