本作が多くの読者の胸を掴んで離さない最大の理由は、美談に仕立て上げられていない「ありのままの真実」が刻まれている点にある。遺されたノートには、将来成長した娘が壁にぶつかったときに読んでほしいと願う率直な助言や、母親としてそばにいてあげられない悔しさが赤裸々に記されていた。
決して聖人君子のような言葉ばかりではない。「もっと生きたい」「成長を見届けたい」という生への生々しい執着と、愛する家族を残していくことへの断腸の思い。それらが一切の粉飾なく綴られているからこそ、読者は彼女の孤独と深い愛の深淵に触れることになる。夫と共に歩んだ闘病生活の記憶、そして母の旅立ちを見送った家族が今どのような想いで前を向いているのか。娘の健やかな成長とともに紡がれ続ける家族の歩みは、彼女が遺した言葉が現在進行形で生き続けている証拠でもある。