「まずい」という噂が一人歩きする一方で、弁松には何十年にもわたって愛好する熱狂的な顧客層が存在する。彼らは口を揃えて「弁松の代わりになる弁当は地球上に存在しない」と主張する。
この弁当の真骨頂は、おかず単体ではなく「白いご飯と一緒に口へ運んだ瞬間」に訪れる。濃密に煮詰められた里芋や竹の子、ゴボウの濃い味が、冷めた白飯の甘みを極限まで引き立てるのだ。酒の肴としても優秀で、冷えた日本酒や辛口のハイボールと合わせると、その塩気と甘みが最高のペアリングへと変貌する。計算し尽くされた濃さは、米と酒を美味しく飲むための最高の触媒なのである。