レトロ可愛いとSNSのタイムラインを埋め尽くすグラニースクエアカーディガン。この熱狂の導火線となったのは、英ミュージシャンのハリー・スタイルズが着用したJWアンダーソンのカラーブロックカーディガンでした。2020年以降、自宅で過ごす時間を手仕事に充てるムーブメントが世界的に加速し、ブランド側が無償で編み図を公開したことで「自分だけの一着を手編みする」カルチャーが爆発的に拡散した経緯があります。その象徴となったニットは英V&A(ヴィクトリア&アルバート)博物館に歴史的アーカイブとして収蔵されるなど、単なる一過性の流行を超えた文化現象へと昇華しました。
古着や70年代カルチャーを再解釈する「Y2K」や「グランパコア(おじいちゃん風の温かみある服装)」の文脈とも共鳴し、クロシェニット最新トレンドは今やメンズストリートでも当たり前の光景となっています。国内でもWizardなどの専門店が登場し、手芸用品大手オカダヤの公式ブログやワークショップでは、若い世代や男性が熱心にかぎ針を動かす姿が日常化しました。
デジタル空間の均一化された画像に囲まれる日常において、編み目の不均一さや手触りといった「物質的なリアル」を渇望する心理が、手編みモチーフへの強い支持を生み出しています。