害虫駆除情報において、インターネット上で最も無責任に推奨されている悪手が存在します。それが「排水口に沸騰した熱湯を流せば幼虫も卵も一網打尽にできる」という俗説です。
この手法は絶対に実行してはなりません。現代の日本の住宅で標準的に使用されている排水管は、硬質ポリ塩化ビニル管(JIS規格)です。この硬質塩化ビニル管の耐熱温度は一般的に60℃から65℃前後に設定されています。ここに100℃近い熱湯を注ぎ込むと、配管自体が熱膨張によってぐにゃりと変形し、管同士の継手(接着部分)が剥離したり、パッキンが熱劣化して収縮します。
その結果、床下や壁の内部で水漏れ事故が発生し、漏水した湿気が床下を腐食させ、最悪の場合は数百万円単位の修繕費用に発展します。さらに皮肉なことに、漏水によって生まれた床下の超高湿度環境が、カマドウマやシロアリを呼び寄せる最悪の温床を作り出してしまうのです。
チョウバエ幼虫を熱で処理する場合の安全な上限温度は50℃〜55℃程度のお湯です。60℃を超えない温度であっても、数十秒間かけ流すことで幼虫の体組織にあるタンパク質を変性させ、一定の駆除効果を得ることが可能です。熱湯ではなく適温の温水を用い、後述する化学的・物理的アプローチを併用することが鉄則となります。