名古屋グルメを語る上で欠かせない「台湾ラーメン」と「台湾まぜそば」。名前こそ似通っているものの、その成り立ちと構造は根本から異なります。台湾ラーメンが1970年代に中国台湾料理店「味仙」の創業者・郭明優氏が台湾名物の「担仔麺(タンツーめん)」を激辛にアレンジした汁ありラーメンであるのに対し、台湾まぜそばは2008年、名古屋市中川区にオープンした「麺屋はなび 高畑本店」の厨房でまったく異なる文脈から誕生しました。
創業者である新山直人氏が当時の特番インタビューやメディアの取材で明かしている誕生の経緯は、まさに「怪我の功名」でした。当時、新山氏は看板メニューにすべく台湾ラーメンの開発に挑んでいましたが、煮込んだ台湾ミンチが当時の清湯スープとどうしても調和せず、納得のいかない出来栄えに頭を抱えていたといいます。試作のミンチをゴミ箱へ捨てようとしたその瞬間、厨房にいた当時のアルバイトスタッフが放った「茹で上げた麺に直接かけてみたらどうですか?」という何気ない一言が、運命の歯車を大きく動かしました。
実際に茹でたての太麺にミンチを絡めてみると、強烈な手応えがありました。しかし、ただ麺に載せるだけではミンチと麺がバラバラに遊んでしまいます。そこで新山氏が編み出したのが、茹で上がった全粒粉入りの極太麺をテボの中で「すりこぎ棒」を使い、力強くゴシゴシと擦りつけるように傷をつける特殊な湯切り手法でした。あえて麺の表面を傷つけて糊(デンプン質)を溶出させることで、濃厚なタレ、動物性脂、魚粉、そして台湾ミンチが糊状に絡みつき、口の中で爆発的な一体感を生み出す構造を完成させたのです。