インターネット上のワイン情報や知恵袋などでは、時に「ラ・ミッションはオー・ブリオンの二番手や格下シャトーではないのか?」という根本的な誤認を目にすることがあります。しかし、この言説はボルドーの歴史とテロワールを著しく見誤った解釈です。
そもそも1855年のボルドー格付けは、パリ万国博覧会に合わせて「メドック地区」の赤ワインを対象に制定された地方ルールでした。その際、例外中の例外として名声が高すぎたオー・ブリオンのみがグラーヴ地区から選出されましたが、当時のラ・ミッションは修道会から民間に渡った過渡期にあり、審査の俎上にすら載っていなかったという歴史的経緯があります。
後に1953年・1959年に制定された「グラーヴ地区格付け(現ペサック・レオニャン)」において、ラ・ミッションは当然のごとく最高ランクの特級(Cru Classé)に認定されました。海外のオークションシーンでは、1955年や1989年などの歴史的ヴィンテージにおいて、ラ・ミッションがオー・ブリオンの落札価格を数割上回る逆転現象が日常的に発生しています。「格付けの名称」に惑わされる層が抱くイメージと、世界の目利きが下す「中身の実力評価」との間には、明確なギャップが存在しているのです。