シュラスコとは、牛や豚、鶏、羊などの肉を大きな金串(エスペート)に刺し、専用の回転式シュラスケーロ(炭火やグリラー)でじっくりと回転させながら焼き上げる南米ブラジルの伝統的な肉料理です。味付けの基本は極めてシンプルで、大粒の粗挽き岩塩(サル・グロッソ)を振って焼き上げることで、肉本来が持つ野性味と脂の甘みを極限まで引き出します。
この食文化の起源は、17世紀から18世紀にかけてブラジル南部リオグランデ・ド・スル州の草原地帯(パンパ)で暮らしていたガウショ(Gaúcho=カウボーイ・牧童)たちの野外炊事に遡ります。牛の解体後、新鮮な塊肉を木や鉄の串に刺し、地面に掘った穴で熾した薪の火を取り囲んで豪快に焼き、ナイフで削ぎ落としながら分け合って食べたのが始まりです。
現代のシュラスコ店(シュラスカリア)における最大の特徴は、パサドール(Passador)と呼ばれる専門のウェイターが焼き立ての串を客席まで次々と運び、目の前で切り分けてくれる「ロディジオ(Rodízio=巡回型食べ放題)」と呼ばれる提供スタイルにあります。客自身が網の上で薄切り肉を焼く日本の焼肉とは異なり、プロがベストな火入れを見極めた塊肉の最もジューシーな表面を、最高のタイミングで味わえる点が最大の相違点です。
また、味付けの面でも大きな違いがあります。甘辛い醤油ベースのタレや味噌ダレに漬け込む日本の焼肉に対し、シュラスコは岩塩のみで焼き上げ、食べる直前に刻み野菜とワインビネガーを合わせた特製ソース「モーリョ・ヴィナグレッチ(モーリョソース)」を添えて、さっぱりと肉の旨味を味わうのが本場の流儀です。