愛犬がリズミカルに片足を浮かせて歩く姿は、一見すると無邪気に遊んでいるように映るかもしれません。しかし、獣医学的な見地から見ると、犬がパテラでスキップする歩き方の理由は、大腿骨の滑車溝と呼ばれる溝から外れてしまった膝蓋骨(ひざのお皿)を、足をピーンと伸ばしたり曲げたりする反動で「元の位置へはめ直そうとする無意識の整復動作」に他なりません。
膝関節は大腿骨、脛骨(すねの骨)、そして膝蓋骨の3つが靭帯や筋肉と連動してスムーズに稼働しています。滑車溝が浅かったり骨が湾曲していたりすると、溝からお皿が内側(内方脱臼)または外側(外方脱臼)へ滑り落ちます。この脱臼が生じた瞬間に膝のロックや違和感を覚えるため、犬がパテラで後ろ足をあげる原因と真相の根本には、関節の引っかかりを解消しようとする物理的な生体反応が存在します。
見逃してはならないパテラによる犬の歩行異常の初期症状には、以下のような日常の些細な変化が含まれます。
- 歩行中に数歩だけ片足をケンケンさせ、すぐに何事もなかったかのように4足歩行に戻る
- フローリングで立ち上がるときに後ろ足がプルプルと震えたり滑ったりする
- 段差をジャンプするのをためらう、あるいは抱き上げた瞬間に「キャン」と鋭い声をあげる
- 座るときに足を綺麗に折りたたまず、片足を外側に投げ出す「横座り(お姉さん座り)」が増える
- 後ろ足の関節まわりを頻繁にペロペロとなめ続ける
とりわけトイプードルのパテラに見られる歩き方の特徴として、先天的な骨格の細さに加えて筋肉量のバランスが崩れやすく、生後半年から2歳前後の若齢期に突然スキップ歩行が現れるパターンが際立ちます。「痛がっている様子がないから平気」と自己判断してしまうと、骨の変形が静かに進行してしまうため、早期の鑑別が極めて重要です。