ネット上には「猫の噛み癖を一発で直す裏ワザ」といった情報が氾濫していますが、その中には動物行動学の観点から絶対にやってはならない危険な悪手が数多く含まれています。
最大の誤解は、「噛まれた瞬間に大声を出して叱る」「鼻先をピンと叩く・マズルをつかむ」といった体罰的介入です。犬と異なり、猫には「悪いことをしたから罰を受けている」という因果関係を論理的に理解する認知機能はありません。人間から突然の暴力や爆音を見舞われた猫は、ただ「この同居人は予測不能で危害を加える恐ろしい存在だ」と学習するだけです。結果として飼い主への信頼関係が崩壊し、恐怖心から先制攻撃を仕掛ける重度の防衛的攻撃行動へと悪化します。
また、「噛まれたら噛み返す」という俗説も論外です。猫にとって人間が口を近づけてくる行為は捕食者による生命の危機であり、パニックを引き起こす以外の効果はありません。
さらに見落とされがちな盲点が、噛まれた瞬間に「痛い!」と甲高い悲鳴を上げて慌てて足をバタつかせる行為です。猫にとって甲高い声は「捕らえた獲物の断末魔の叫び」であり、バタつく足は「弱って暴れる獲物」に映ります。無意識のリアクションが、皮肉にも猫のハンティング欲を最大級に刺激し、噛み癖を助長する報酬(ご褒美)として機能してしまうのです。正しい猫の足噛みへのしつけは、「騒がず、怒らず、刺激を与えない」が鉄則です。