自動車ディーラーの整備主任者や中古車販売店の現場スタッフに取材を行うと、O/Dスイッチにまつわるユーザーの混乱が今なお頻発している実態が浮かび上がる。大手整備工場に寄せられた相談事例では、「メーターにオレンジのランプがつきっぱなしで消えない」「故障したと思って慌てて入庫した」というケースが日常茶飯事だという。
SNSやネット掲示板、Q&Aサイトに蓄積された生の声と、専門家が指摘するAT車ODスイッチ真相を照らし合わせると、現場では次のような現実が確認できる。
「高速道路を走っていて『なんだか今日はずっとエンジン音がうるさい』と思ったら、知らぬ間に膝や荷物が当たってO/Dボタンが押されていた。ガソリンメーターの減りが異常に早くて青ざめた」(30代・営業職男性の証言)
大手ロードサービス関係者の解説によると、平坦な高速道路を100km/hで走行中、O/DがON(4速)であればエンジン回転数は2,200〜2,500rpm程度で安定する。しかし、誤ってO/D OFF(3速)のまま走行を続けた場合、回転数は3,200〜3,500rpmまで跳ね上がる。この状態が続くと瞬間燃費は通常走行時から約15〜20%悪化し、エンジンルームからの騒音も著しく増大する。意図しない点灯は純粋なエネルギーロスに直結しているのだ。
なお、近年の新型車でO/Dスイッチを見かけなくなった背景には、トランスミッションの構造変化がある。変速段数が無段階のCVT(無段変速機)や、6速〜10速に多段化した電子制御ATが主流となったことで、機械的に4速をカットする方式から、「S(スポーツ)モード」「B(ブレーキ)レンジ」「パドルシフト」による電子制御へとシフトしたためだ。しかし、国内の軽自動車や商用バン(プロボックスなど)を含む膨大な既販車では現役の機能であり、正しい知識の価値は決して色褪せていない。