インターネット上の健康情報や動画プラットフォームでは、「側頭部のこりを親指で強く押して撃退する」「グリグリ揉みほぐす小顔マッサージ」といったコンテンツが散見される。しかし、ここには医学的に大きな落とし穴が存在する。
第1の誤解は、「強い力で痛みを我慢して押すほど筋肉がほぐれる」という盲信だ。側頭筋は非常に薄い筋肉であり、直下には頭蓋骨が存在する。そこへ硬い指やマッサージ器具で強い圧迫を加えると、筋繊維が微細断裂を起こし、かえって防御反応として筋肉を硬直させてしまう。いわゆる「揉み返し」だけでなく、筋膜の炎症を悪化させて難治性の慢性痛へ移行させるリスクがある。
第2の盲点は、血管性頭痛(偏頭痛)の急性期にマッサージを行ってしまうことだ。血管が拡張して周囲に炎症物質が放出されている最中に患部を揉んだり温めたりすると、血流がさらに増加し、激しい拍動痛を呼び覚ますことになる。痛みの原因が「血流不足による筋拘縮」なのか「血管拡張による炎症」なのかを判別せずに刺激を加える行為は極めて危険だ。
第3に、「市販の頭痛薬を常用すれば問題ない」という過信である。頭痛薬を月に10日以上、3ヶ月以上にわたって服用し続けると、「薬物乱用頭痛(薬剤使用過多による頭痛)」を引き起こし、脳の痛みを感じる閾値が下がってしまう。薬を飲んでいるのに側頭部の圧痛が消えないどころか悪化していく悪循環に陥る読者は少なくない。