やるべきタスクがあるにもかかわらず、ギリギリまで手がつけられない背景には、脳の司令塔である前頭前野とドーパミンの影響が深く関わっています。前頭前野は、行動の計画立案、優先順位の決定、衝動の抑制といった「実行機能」を司る部位です。ADHDの脳では、この実行機能を駆動させる神経伝達物質であるドーパミンの働きが不足しやすい傾向にあります。
ドーパミンは脳内における「やる気や報酬のシグナル」です。定型発達の脳であれば「後で困るから今のうちにやっておこう」という将来の不利益を避ける動機でドーパミンが分泌され、作業に取り掛かることができます。一方、ADHD先延ばし脳の仕組みでは、遠い未来の報酬やリスクに対してドーパミンがほとんど反応しません。
その結果、締め切りが数時間後に迫り、「今やらないと社会的に破滅する」という強烈な危機感(アドレナリンやノルアドレナリンの急激な上昇)が生じて初めて、脳の着火スイッチが入ります。「締め切り直前の超人的な集中力」は特異な才能のように語られることもありますが、実態は脳の危機管理システムを限界まで酷使してなんとか代償している状態です。