長崎の花街・丸山は、江戸時代に江戸の吉原、京都の島原と並び称された日本屈指の遊郭でした。その中心にあったのが、現在の史跡料亭花月の前身である「引田屋」です。文政元年(1818年)に建てられた花月楼が、昭和初期に料亭として独立し、現在にその風情を伝えています。
館内でも特に注目を集めるのが、大広間「竜の間」の床柱に残された「坂本龍馬の刀傷」です。文久から慶応にかけて長崎で海援隊を率いていた龍馬が、酒宴の席で酔った勢いにまかせて床柱に切り付けた痕跡と伝えられています。歴史ファンにとっては、激動の幕末を生きた志士たちの体温を間近に感じられる特別な遺構です。
また、勝海舟ゆかりの地としても知られ、彼が揮毫した扁額や、オランダ人医師ポンペ、文人墨客たちが残した墨跡・工芸品が館内に多数保管されています。隣接する資料館「集古館」には、長崎の国際交流と花街文化を物語る貴重な史料が惜しみなく展示されており、食事の前後にゆっくりと鑑賞することができます。