日常の調理現場で最も頻出する疑問が、「名前の響きが似ているだけで、中身も似たようなものなのではないか」という誤解です。しかし、製造背景と成分構成を紐解くと、両者は海と陸ほどに異なる出自を持っています。
ブルドック ウスターソースに代表されるウスターソースは、19世紀初頭のイギリス・ウスターシャー州で誕生した洋食調味料です。玉ねぎ、トマト、りんごなどの野菜や果実のピューレに食酢、塩、砂糖、数十種類の香辛料を加え、長期間熟成させて作られます。特徴は、サラサラとした低粘度と、鼻に抜ける爽快なスパイス感、そして食酢由来のキ快な酸味です。
一方、李錦記 オイスターソースが世界標準として知られるオイスターソースは、19世紀末の中国・広東省で偶然から誕生しました。牡蠣(カキ)を塩水で煮詰めた際に出る濃厚な煮汁をベースに、砂糖やカラメル、とろみをつける澱粉などを加えた中華発祥の調味料です。味わいの中心は、牡蠣由来のアミノ酸(グルタミン酸やグリシン)とグリコーゲンが生み出す、圧倒的なコクととろみのある甘みです。