作中でこの壮絶な過去が描かれたのは、キメラ=アント編の佳境であるコミックス第25巻・第265話「境地」(アニメ版第111話および第126話)です。人類最強の念能力者と目されていたアイザック=ネテロが、いかにして絶対的な領域に足を踏み入れたのかを紐解く回想シーンとして登場します。
当時46歳だったネテロは、自身の肉体と武術の成長が頭打ちになったことを自覚し、絶望的な焦燥感に苛まれていました。悩みに悩み抜いた末、彼が至った境地は「今の自分を育ててくれた武道への純粋な感謝」でした。山に籠もったネテロが自らに課した日課は、次の動作を愚直に繰り返すことでした。
「気を整え、拝み、祈り、構えて、突く」
これを1日1万回完遂するまで眠らないという極限の誓いです。初日は1万回を突き終えるまでに18時間以上を要し、完了と同時に疲労困憊で倒れ込み泥のように眠る日々が続きました。単なる腕立て伏せやサンドバッグ打ちのような反復運動ではなく、一突きごとに「拝み」と「祈り」という精神的儀礼を挟む点が、この修行の特異性を物語っています。