晴れて数千倍の倍率を突破し「宇宙飛行士候補者(アストロノート・キャンディデート)」に選ばれたとしても、その瞬間から宇宙へ行けるわけではありません。そこから最低でも約2年間に及ぶ基礎訓練を修了し、公式に「宇宙飛行士」として認定される必要があります。
基礎訓練のカリキュラムは、多岐にわたる専門分野の極限集合体です。
- T-38ジェット練習機による操縦・同乗訓練:時速数百キロで飛行しながら、瞬時の状況判断と正確な無線交信を行う「マルチタスク処理能力」を叩き込む。
- 無重力シミュレーション(中性浮力訓練):巨大な深層プールに沈められた宇宙ステーションの実物大モックアップを使い、重い宇宙服を着用して船外活動(EVA)の基礎を学ぶ。
- 極地・海洋サバイバル訓練:宇宙船が不時着した事態を想定し、雪山や海上などの過酷な自然環境下で数日間生き延びる技術を習得する。
- 語学および宇宙工学・生命科学の座学:ロシア語の習得(ソユーズ宇宙船やISS運用のためのバックアップ知識)や軌道力学、宇宙医学の集中講義。
この訓練期間中も常にパフォーマンスが評価され、全ての基準をクリアして初めて正式な宇宙飛行士としてJAXAに認定されます。さらに、アルテミス計画での月周回・月面探査ミッションにアサインされた場合は、月面探査車(ローバー)の運転訓練や地質学調査の現地フィールドワークなど、さらなる高度専門訓練が数年単位で課されます。